●これからの筑波研究学園都市今後筑波研究学園都市の整備に向けて<提言> I.
筑波研究学園都市の整備の現状と成果 本都市建設の経緯と整備状況
(1)第1ステージ「都市建設期」
昭和38年9月の閣議了解において、研究学園都市を筑波に建設すること、用地の取得・造成を日本住宅公団(現住宅・都市整備公団)が行うことが決定し、東京の過密解消と、科学技術振興・高等教育の充実を目的に、国家プロジェクトとして、茨城県南に位置する常総台地上の約28,400ha(旧6町村)の広大な地域を対象に、都市建設が開始された。
昭和41年12月には用地買収を開始、主として宅地造成は新住宅市街地開発事業と土地区画整理事業で、研究・教育機関の施設建設は一団地の官公庁施設事業で進められた。昭和45年5月には「筑波研究学園都市建設法」が制定され、都市建設の法的枠組が作られた。そして昭和55年、予定された43の国の研究教育機関(現在45機関立地)が移転・新設され、関連公共・公益的施設についても整備が進められ、新都市としての基礎固めが終わった。
(2)第2ステージ「都市整備期」 その後、昭和58年には「つくばセンタービル」が完成し、都心地区には大規模商業施設が建設されるなど、都市施設が充実していく。昭和60年、日本で3回目の万国博覧会「国際科学技術博覧会」が開催され、科学技術を身近なものとして理解増進が図られるとともに、「TSUKUBA」の名を世界的に広める契機となった。また、この頃から周辺開発地区において茨城県や住宅・都市整備公団が施行した工業団地等への民間企業の進出にはずみがつき、現在では、国・民間合わせ約300に及ぶ研究機関・企業が活発な活動を展開しており、人口約18万人、約1万3千人の研究者を擁する我が国最大の研究開発センターに成長した。
(3)第3ステージ「都市発展期」 つくばエクスプレスや首都圏中央連絡自動車道(圏央道)などの整備の具体化や、科学技術基本計画に基づく本都市の位置づけ等を踏まえ、今後は、これまで集積してきた資源を活かし、実質的な成果を発現する世界的科学技術都市へと発展が期待される第3ステージを迎える。
「都市づくり」面での成果と課題
(1)成 果
a.整然とした美しい街と先端的都市施設 本都市では、我が国に例の少ない本格的計画都市として、自動車交通に対応した南北東西に伸びる格子状の幹線道路や駐車場、都市公園、集合住宅、つくばセンタービル、小・中・高等学校等の各種公共・公益的施設が整備されるなど、整然と計画的に基盤整備が行われた。
また、地域冷暖房、真空集塵、CATVの各システムが収められた共同溝、ペデストリアンデッキを用いた歩車分離などの先端的都市施設等は整備範囲が限られているものの、その成果は、他の大規模ニュータウン開発等に活かされることになった。
b.豊かでゆとりある研究・居住環境 本都市では、自然・田園的環境に囲まれた、ゆとりある研究環境、居住環境が実現された。また現在では、研究教育機関等に残る既存樹林に加え、施設内緑化や街路樹等計画的な植栽帯も順調に成長し、緑豊かな都市として、風格を備えつつある。
また、土地区画整理事業等の計画的な実施により、開発段階のスプロールの発生を抑制し、特に、周辺開発地区では、平地林等の自然環境や、田園的環境が保全されてきた。
c.均衡ある首都圏の整備への貢献 土浦市や牛久市との連携・交流を深め、自立都市圏を形成するため、土浦・つくば・牛久業務核都市基本構想が推進されている。また、国の試験研究・教育機関等が移転した東京都区内等の跡地(64跡地359ha)は、公園緑地等公共公益施設用地として有効に利用されている。
(2)課 題 a.定住化の遅れ 研究学園地区の人口は約6万人と、計画人口10万人を大幅に下回っている。この原因としては、研究機関等在勤者の中に本都市における家族の生活・教育等の問題を理由とする単身赴任者や通勤者が未だに少なくないことや、定年後の職場の確保の困難さや、地区内の地価の高さ等のために定住化が遅れていることなどがあげられる。また、その結果として、土地区画整理区域内の宅地化の遅れが見られる。
b.公共交通機関の脆弱さ等都市的利便性の不足 バス等の公共交通機関が脆弱であり、外国人や子ども、高齢者など自動車を持たない住民層や短期滞在者の域内交通に支障が生じている。また最近では、交通渋滞の発生や駐車場不足、交通事故の発生などが問題となっている。
さらに、商業・業務施設や、ホテル・文化・娯楽施設等の各種サービス業など全般的に都市的サービスが不足しており、人々が集まる都市的賑わいも少ない。
c.先端的都市施設等の適切な維持管理
計画的に導入・整備された先端的都市施設、整備水準の高い公園・緑地、ペデストリアンデッキなどの公共施設の維持管理にかなりの費用を要し、施設も整備後かなりの年数を経過し老朽化してきており、今後修繕・更新を含めた施設の適切な維持管理が課題となる。また、定住化の遅れ等に伴い積み残しとなっている公共公益施設の建設やCATVのサービスエリアが限られていることなどが課題である。
d.研究学園地区・周辺開発地区との格差 研究学園地区は、住宅・都市整備公団等による基盤整備を計画的に行うことにより、全国平均を上回る水準の都市施設整備が行われたものの、周辺開発地区は研究学園地区と比べ、上・下水道や道路整備等の居住環境の整備が遅れている。また、研究学園地区の住民の市政等への関心の低さなど、両地区の住民に必ずしも一体感があるとはいえない状況にある。
「科学技術・学術の集積及び研究活動」面での成果と課題
(1)成 果 a.産学官の研究機関の集積する我が国最大の研究開発センター
本都市には、国の研究機関(本所所在)が26機関立地し、全国の国立研究機関の約27%、職員数にして約44%を占めている。また、筑波大学やその他の研究機関等を合わせると45機関となる。さらに、周辺開発地区の研究団地・工業団地などを含めると、国・民間合わせて約300に及ぶ研究機関・企業が集積し、我が国最大の研究開発センターが形成されている。
b.国際交流拠点の形成 国際的水準の科学技術・学術研究成果が数多く生み出されるとともに、内外の研究教育機関等との研究交流が進み、また、数多くの国際会議も開催され、外国人研究者も年々増加するなど、科学技術・学術研究活動における国際交流拠点を形成した。
c.我が国の科学技術振興の牽引役 全国各地域において科学技術振興が進められる中で、本都市は情報ネットワークの拠点や我が国の科学技術流通の窓口となり、科学技術中枢拠点として、我が国全体の科学技術の底上げに貢献、欧米のキャッチアップから脱却するための牽引車的役割を果たした。
d.科学技術成果の社会還元 国際科学技術博覧会や、各研究機関等の常設展示施設、毎年4月に開催される科学技術週間や科学フェスティバル等を通じた、科学技術の理解増進、科学技術成果の社会還元、地元還元を進めてきた。近年は、本都市で、新産業創出等に寄与するTARA(筑波大学先端学際領域研究センター)や筑波塾等が設立され、また、茨城県では「中小企業テクノエキスパート派遣事業」等の取り組みがなされている。
(2)課 題 a.研究交流・技術移転に際しての壁 本都市のみならず、我が国共通の問題としてよく指摘されているところであるが、本都市においても、省庁間の有機的な連携の不足、研究職公務員の人事システムに柔軟性が低いこと、官民間の壁の存在など、研究機関や研究者相互の横断的な研究交流が活性化しにくい環境がいまだに存在する。また、国の研究教育機関等が生み出す先端的な研究成果や技術の知的情報が、民間企業の技術開発に直接結びつかないことや、実用化研究への移転が進まないなど、産業分野への技術移転が遅れている。 さらに、シリコンバレー等の海外の研究都市と比較すると、基礎研究等により生み出された技術の実用化を進めるベンチャー企業や、ベンチャー企業を育成する各種支援機能の整備・定着が遅れている。
b.研究施設の老朽化・研究支援機能の不足 研究の高度化・多様化に対応し、最先端の学術研究等を行うためには常に施設・設備等の更新・拡充を行うことが不可欠である。しかし、国の試験研究施設が建設されてから約20年が経過し、多くの施設で老朽化や狭隘化が問題となっている。
また、科学技術・学術研究活動を支える機能も必要であるが、技術相談やコンサルティング、情報処理、分析・計算等の研究支援サービスや、これらを担う研究支援者等が不足している。
c.外国人研究者の受入れ体制が不十分
本都市に訪れる外国人研究者は年々増加し、約半数の公・民研究機関に在籍するとともに、滞在期間は長期化し、家族を伴う研究者、留学生が増えている。しかし、外国人研究者の受入れ制度や、短長期滞在に対応した宿舎や日本語研修などの受入れ体制は十分とはいえない。また、本都市における医療、教育、地域サービスなどの家族の生活についての不安があることも、優秀な外国人研究者の受入れの障害となっている。
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