●これからの筑波研究学園都市今後の筑波研究学園都市の整備に向けて<提言> V.
都市づくりに取り組む体制と方策
国・県・市・町・公団の協調体制の強化 本都市は、建設当初から、国、茨城県、つくば市(旧筑波町、大穂町、豊里町、谷田部町、桜村)、茎崎町、住宅・都市整備公団が、それぞれの責任と役割に応じて互いに協力し合うという基本姿勢のもとに整備が進められてきた。今後も、各主体の持つ特性を活かし、5者の緊密な協調体制を維持・強化することが必要である。 しかしながら、本都市の整備の方向性については、これまでの国の研究機関等の移転と、それに伴う公共公益施設の整備の段階から、土浦市、牛久市を含む広域的な視点を有し、環境共生等の観点を取り入れた新しい都市づくりのモデル地域としての整備へとシフトしていくことになる。都市建設、都市整備という都市づくりの基礎段階から都市発展を目指す新たな段階に達した今、これらに対応した各主体の役割の見直しも必要となる。
高まる自治体の役割 平成17年に予定されるつくばエクスプレスの整備を契機に人口の急激な増加が見込まれること、高齢人口の増加が確実なこと、生活面の充実に対する要望が強まることなどを踏まえると、住民に密着した自治体であるつくば市および茎崎町の役割は一層重要になる。本都市に居住する様々な住民の特性やニーズにきめ細かく対応し、居住環境の向上に努めるとともに、住民に対して地域市民として地域の政治・行政への関心を高め、参加を促すことが重要である。また、地方分権を巡る昨今の動向や、本都市が成熟段階に入ったことを鑑みると、市町は今後、住民に身近な団体として基礎的な都市行政を推進することはもとより、自然・田園・都市が調和した環境共生型都市づくりや都市と農村の交流推進母体として、トータルな街づくりの主体としての役割を担う必要がある。 広域自治体としての茨城県は、つくばエクスプレスや圏央道等の基幹となる交通体系の整備の推進母体としての役割を一層強化し、また、研究学園地区を核としたつくばエクスプレス沿線開発等による都市圏の整備の推進に努めるほか、広域的な都市圏にふさわしい中枢拠点地区の形成や総合的な都市機能の充実など、広域都市圏整備のための総合的な計画・調整機能を発揮していくことが重要である。また、科学技術の集積や産業の振興を図ることは、本都市の自立的発展にとって重要な課題であり、この観点からも地域産業の活性化を担う茨城県の役割は重要であり、国の産業政策等と連携しつつ、本都市の科学技術の集積を活かした中小企業や農業など地域産業の振興を図る必要がある。
地域住民や研究機関の都市づくりへの参画 研究機関関係者、学生、外国人、さらには今後の新たな転入者を含めた住民は、地域市民として、街づくりや地域活動に積極的に参画することが求められる。特に、本都市の研究者は、海外での都市生活を経験する機会が多く、これまでにも経験を活かした都市づくりに関するいくつかの提案がなされているが、今後も「つくば」の都市づくりに参画する積極的姿勢が望まれる。また、国の研究教育機関や民間企業等についても筑波研究学園都市研究機関等連絡協議会等の活動を通じて、都市づくりに関する提言のとりまとめやその実践を通して、地域への貢献を更に進める必要がある。 なお、研究学園都市づくりが住民等との理解・協力のもとに進められるのは当然のことであり、都市づくりに関する情報は、住民や本都市来訪者に広く周知するため、つくばインフォメーションセンター等を通じ適時適切に広報されるべきである。
国の企画・調整機能の強化 科学技術基本計画において、科学技術振興の中核拠点として位置づけられている本都市の整備にあたって国としての役割を果たす必要があることはいうまでもない。特に研究教育機関間の研究交流や共同研究の一層の推進を図るためには、関係省庁間の横断的調整を図ることが不可欠である。また、例えば、外国人研究者の生活支援に対しても、その支援システムを関係省庁が共同で整備するなどの努力が必要である。 また、本都市は、新しい都市づくりのモデル地域として、ここでの成果を広く全国に還元していく使命を持ち続けていくことから、本都市の整備に対して、国としての役割を果たしていくことが必要である。 現在、関係省庁の調整等のため「研究・学園都市建設推進本部」等が国土庁に置かれているが、これを中心に、今後の都市整備の方向性に対応した企画・調整機能を強化するとともに、関係省庁が一体となって取り組む体制づくりが必要である。
まちづくり実施機関としての住宅・都市整備公団の役割 本都市においては、今後、周辺開発地区において、つくばエクスプレス沿線を中心とする大規模かつ広域的な都市開発整備が必要となること、また、研究学園地区内の熟成、さらには都心地区の再整備や科学技術の集積を活かした次世代産業の立地促進、環境問題への対応等さまざまな課題がある。 住宅・都市整備公団は、今後とも、本都市におけるまちづくりの主体として大きな役割を占めるため、他の主体と連携しながら、これまでの実績、総合的なまちづくりのノウハウや都心地区の資産を活かしつつ、本都市の都市づくりの重要な役割を担い、21世紀のパイロットモデル都市づくりを推進していくことが期待される。
公的機関と連携する民間セクターの役割 今後、成熟段階に入った本都市の都市整備においては、国、地方公共団体、住宅・都市整備公団等の公的機関に加えて、民間セクターの参入が不可欠であり、公的機関との連携を図りながら、民間セクターを都市づくりの中に取り込んでいくことが重要である。したがって、商業・業務施設、情報通信基盤、ホテル、物流施設等の整備に当たっては、民間セクターの導入を積極的に進めるとともに、民間セクターの活動環境を整備することが必要である。
総合的都市づくり支援システムの構築 間近に迫った21世紀に「科学技術創造立国」として国家の活路を拓こうとする我が国としては、この筑波研究学園都市の集積効果を最大限活用することは喫緊の課題であり、「つくば」関係者総体の責務である。また、本都市内の多数の研究機関の研究成果を街づくりと市民生活に積極的に活用することは、研究成果の実用化、普及宣伝という意味からも、快適な市民生活の実現という意味からも、研究機関と市民の共通の利益である。そのような意味からも、本都市はパイロットモデル都市として、今後も、環境との共生、多様なライフスタイルへの対応、緑に囲まれた美しいアーバンデザインなど、新しい都市づくりの課題に果敢に立ち向かい、ここでの成果を広く全国に還元していく役割をも担っている。この観点に立って、本都市は永遠に「未完の街」として未来に向かって挑戦する先導的都市であり続けることが必要である。 このような先導的都市づくりは、通常の地方行政の範囲を超えるものであり、茨城県、つくば市、茎崎町による都市づくりを補完するためにも、国、住宅・都市整備公団の役割を継続させることはもとより、地域住民等の力をも活用する新たな概念としての総合的都市づくり支援システムを確立する必要がある。 総合的都市づくり支援システムは、当然のことながら、各行政主体や研究機関が自らの役割と責任に基づき実行できる事業を含まない。むしろ、関係主体それぞれが果たす役割と責任の狭間に存在する課題を、関係主体間の共同、協調、連携により解決し、都市づくりに貢献するシステムである。例えば、研究機関が有機的に連携し地域産業活性化への貢献方策を深める際の仲介役を務めたり、外国人研究者の生活支援を各研究機関の共同委託に基づき実施したり、国際コンベンションの開催を企画推進したり、各研究機関の常設展示場のネットワークを形成するなどして科学技術の理解増進に努めたり、日常的に農業従事者と都市住民との交流を促進したりすることなど、既存の行政組織や各研究機関の個別努力では対応することが困難な課題に対し柔軟に対処するためのシステムである。 国の関係機関、茨城県、つくば市、茎崎町等関係主体がその必要性を深く認識し、早急にそのシステム構築に取り組むことを強く期待する。 |