転換を迫られる日本
本都市建設の決定以来30年余り、本都市を取り巻く社会経済環境は大きく変化した。国際的には、冷戦終結に伴う新しい秩序づくりに向けての国際社会の模索、経済の自由化、国際化に伴う経済競争の激化とアジア諸国の国際社会における重要性の高まりといった動向がみられ、また、国内的には、少子化・高齢化の進展に伴う社会システムの見直しの必要性、バブル経済崩壊以降の安定的成長のための経済の新たな枠組みの構築と独創的・先端的な科学技術の開発による新産業の創出の必要性といったさまざまな課題を抱えている。
さらには、食糧・エネルギー問題、環境問題など人類の生存に係わる地球規模の問題が喫緊のものとなり、これらの諸問題の解決に対して科学技術への期待が高まるとともに、人間や社会と科学技術の関係、ひいては自然科学と人文科学の調和のとれた発展の必要性についても認識が高まっている。
科学技術分野の新しい挑戦 我が国は、フロントランナーの一員として、自ら未開の科学技術分野に挑戦していくことが必要であるが、ひるがえって我が国の科学技術の現状を見ると、近年経験したことのない厳しい状態にある。特に、政府の研究開発投資負担が欧米と比較して低く、投資額自体も伸び悩みの傾向を示していること、基礎研究に係る多くの分野が、欧米と比較して劣位を拡大させていること、応用・開発研究についても、米国に比べると全分野で劣位が拡大していること、研究開発システムの柔軟性・競争性が低く、さまざまな制約が顕在化していることなど、多くの課題が山積している。
さらには、将来の我が国の科学技術を担う若者に科学技術離れもみられるなど由々しき状況にあり、こうした中で、平成7年11月、我が国における科学技術水準の向上を図り、もって我が国の経済社会の発展と福祉の向上に寄与するとともに、世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することを目的として、科学技術基本法が制定され、これに基づき、平成8年7月には科学技術基本計画が策定された。科学技術基本計画では、こうした我が国の科学技術を巡る厳しい現状を真摯に受け止め、
a. 研究環境の柔軟かつ競争的で開かれたものへの抜本的改善 b. 産学官全体の研究開発能力の引き上げと最大限の発揮、 c. 研究成果の国民、社会、経済への円滑な還元
を政策上の優先課題として掲げ、任期付任用制や兼業許可の円滑化、ポスドク等1万人支援計画など数多くの画期的な施策を実施し、科学技術政策を総合的、計画的に推進することをうたっている。
科学技術基本計画においても、本都市は、都市としては唯一固有名詞をあげて、内外に開かれた連携・交流拠点として育成を図ることや、世界の情報・研究交流の核としていくことなど具体的に果たすべき役割がうたわれ、我が国全体の研究開発能力の底上げに貢献していくことなどが期待されている。
首都圏における広域的役割 本都市は、都市建設当初と比べて格段に広域化した人々の生活圏や情報化を背景とし、また、平成5年に承認された「土浦・つくば・牛久業務核都市基本構想」により、茨城南部の自立都市圏の中核都市と位置付けられるなど、近接する土浦市や牛久市との都市機能分担や連携を強めてきた。加えて、21世紀初頭に完成が予定されるつくばエクスプレスと圏央道は、本都市の広域的な位置づけを抜本的に変えていくこととなる。
つくばエクスプレスは、秋葉原〜つくば間を45分で結び、平成17年開業が予定されている。従来、高速バスで最短65分かかっていた東京都心との時間距離が大幅に短縮されるほか、定時性が確保されることも大きな効果である。これは人、情報等の流れにおいて東京と本都市との関係をより緊密なものにすると期待される。また、大規模な沿線地域の住宅開発等により、本都市建設以前の居住者や研究者等に加え、東京への通勤者を含む新しいライフスタイルを持つ約10万人の人々が本都市で暮らし始めることになる。さらに、中心地区に新駅が整備されることや、都市圏全体の人口が増加することにより、中心地区には拡大する自立都市圏の中核都市にふさわしい高次都市機能の一層の集積が必要となる。一方、新駅周辺において域内交通の流動が変化することから、これに対応した都市施設整備も必要となる。
一方、圏央道は、首都圏の40〜60km圏を新たに環状で結ぶ自動車専用道路である。つくば〜成田インター間を25分で結ぶなど、新東京国際空港を始めとした千葉・埼玉方面の時間距離が短縮されることになる。新東京国際空港へのアクセス性向上は、国際コンベンションなど国際機能強化のポテンシャルをもたらす。また、圏央道を経由して東北・北陸方面へのアクセス性が向上するとともに、東京へのアクセスでは選択性が向上する。さらに本都市は、常磐道と圏央道との交通結節点となることから、物流など新しい産業の立地や、広域防災拠点など首都圏の広域的な役割を担いうるポテンシャルが生まれる。一方、南北幹線を中心に、本都市内の通過交通が増加し、交通渋滞の悪化等が懸念される。
科学技術・学術研究及び生活面における情報化の進展 インターネットや電子メール等が普及するなど、情報化は昨今急速に進展している。情報化は、科学技術・学術研究分野の振興に大きく寄与するだけでなく、生活者に対しても、サイバースペース上のショッピングや、行政サービスなど各種サービスの利用を通じて、生活利便性を向上させていくことが期待されている。
本都市では、CATV((財)研究学園都市コミュニティケーブルサービス:ACCS)によって情報通信基盤の整備が進められており、新しい包括的な情報通信システムの構築の一環として大学、各研究機関、国際会議場を結ぶLANの実証実験が始まっている。また、国の研究機関では学術研究ネットワーク等を整備している。さらに、研究者を中心に情報リテラシーの高い住民を多数擁していることから、他都市と比べ本都市の情報化の進度は早く、情報化が学術研究分野や社会・生活へ与えるインパクトを最大限に引き出していくための受け入れ体制は整っているということができる。
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